日本財団 図書館


 

そして又、環境問題や国際協力問題にしても大変広い範囲で目配りをし、不公平にならないように、1つの問題だけに集中しないようにというのが行政には必要なわけです。この地域にだけサービスをして、この地域は後回しにという事をしていますと、行政の責任放棄だと言われます。そうすると広く浅くという事になってしまいます。むしろ「此処にこんなに大変な問題があるので、これをやらなければどうなるのだ」と言って集中的にやるのは、絶対ボランティアの方でないと出来ません。自分の問題として一生懸命になる人がいなければ、或る特定の部分の問題というのはなかなか解決出来ないのではないかと思います。国際協力の問題にしても国対国のODAというような時には本当にバランスを配慮しなければなりません。どの国にもちゃんと目配りをしなければというようなものが不可欠なのですが、ボランティアの方達が「あの災害で苦しんでいるあの村のあの可愛い目をしたあの子どもに手を差し伸べなくては」というような事で活動が出来る。おそらくそのようなバランスを欠いた、一生懸命集中的にやるということが、結果的には人の心を打って1番よい国際協力をしているということがしばしばあります。
今後はこのような活動を積み重ねていかなければ、よい国際協力、国際間のボランティアも出来ないのではないかというような気が致します。ちょっと飛躍しますが、おそらく政治というのも最大のボランティアで、社会を良くするために報酬を当てにせず一生懸命にやる人達がいる事によって社会が変わっていくのではないかというような気がしております。報酬を考えずに自発的にやらなければという情熱に駆られて一生懸命にやる人達がこれからの社会を引っ張っていくのだと、そういう意味でボランティアの役割というのは大変大きいのだろうと思います。それは社会にとって大変重要であるだけではなく、個人の人生を豊かにするという点でも、大きな役割を果たしているのではないかと思います。
●ボランティア活動は社会や自分を豊かにする
お金を儲けるためにやらなければならない仕事、やる仕事というのはやった事に対する評価はきちんとお給料で、或いは利益という形で返ってきます。しかしお金に結びつかない活動に対する評価というのは、自分がこういう事がやれたのだという手応え、或いは自分がやった事が人の役に立っているのだという喜びだろうと思います。
又、女性の話にちょっとずれますが、昨年(95年)、北京で世界女性会議が開催されました時に政府間会議と平行して“NGOフォーラム”というのがありました。日本からも5000人以上の人が参加し1OO程のワークショップが開催されました。旅費は殆ど自分持ちで行われました。そして自分達で通訳を雇ったり、自分達の拙い英語で一生懸命自分達の活動を紹介するワークショップを出すという、みんなお金には全く結びつかない事をせっせとやり、その反響は、自分の言葉や自分のやっている事にみんなが耳を傾けてくれたと。つまり、北京会議で自分達がこれをやったというのが物凄い報酬なのです。自分達の活動に対する自信で、やって面白かったことや一緒に苦労した仲間との友情等はおそらくお金で動いていてはなかなか味わえない喜びなのではないでしょうか。おそらく福祉やいろいろな芸術的な活動でも経済的な報酬には結びつかないけれども満足感に結びつく。或いは人間と人間とのふれあいや繋がりを強くするという面での、ノンマネータリーの報酬というものに繋がってくるのではないか。それなしでは人生というのは大変淋し

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION